脳という消化器官

脳は感覚の消化器官だと思う。

 

消化器官とは一般に口から取り込んだ食物が体外に排出されるまでに通る内臓系のことを指す。

このとき食物は細かく分解され、必要な部分のみが体内に吸収され、不要となった残渣が体外へと排出される。

つまり、必要な部分を取り尽くしたあとの食物は、人体の生命活動にとって意味を為さないのだ。

 

では、ひと聴き惚れた音楽が何故繰り返し聴くうちに味気なく思えるのか、好きな食べ物でも何故そればかりを食べていては食傷するのか、"飽きる" という感情は何故生まれるのか。

それは、同じ刺激を繰り返し受けるうちに脳が感覚を消化して "残渣" へと変えてしまうからではないだろうか。

 

もし人間の身体に消化器官が備わっていなければ、食物は口から取り込まれた形を保って体内を通り抜け、何の影響も及ぼさないままで外へ出ていく。

もし脳が消化器官でないとするなら、これと同様に様々な刺激は何の感情も動かさないままに脳を通り過ぎる。

しかし、実際はそうではない。

何かを食べれば分解して一部を体内に吸収し、それが養分となる。

何か刺激を受ければ感情が動く。

これは脳が感覚を消化していることに他ならないと思う。

 

だからきっと新しいものに触れて、挑戦して、新しい刺激を受け続けることが、脳にとっては養分になるんだって、柄にもないけど、そんな話でした。