穴が空いている。

大きいとも小さいとも言えず、それでいて大きさが気にならないという程でもない。

確かな存在感を放つも虚ろな様相をしており、まるで掴みどころが無い。

 

限られた空間に穴が空いていては手狭だ、どうにかして埋めてしまおう。

そうして掬った根や土を、穴へと注いだ。

 

然し埋まる様子がないので、ありったけの食料を投げ入れた。

 

尚も底の見えぬ穴に苛立ちを覚える。

 

趣味であった楽器も、お気に入りの本さえも投げ打った。

 

穴は嘲るように全てを呑み込んでいく。

 

無力感から涙を零す。

すると穴は、滲むようにじわりと広がる。

 

なるほどこの穴は悲しみに応えて大きさが変わるらしい。

それならば道化を演じよう。

 

精一杯の空元気で以て、歌い、踊り、笑ってみせる。

 

穴は益々肥大化していく。

 

万策は尽き、虚脱が襲う。

嗚呼、一体どうすれば。

 

この穴の埋め方を、未だわからないままでいる。